凜と生きる

私が経験した「鬱」というものについて

暗闇

小さい頃から一人部屋で寝ていたと書いたが

そのことで忘れられないことがある

 

あれは小学校4年生頃のこと

いつものように一人で布団に入っていた

寝付けなかった

そしたらなんとも言えない恐怖感に襲われた

最初は漠然とした怖さだったかもしれない

けれどそのあと決定的な理由があって

わたしは夜が怖くなったのだ

(その理由についてはまた後日)

 

わたしは急いで一階へ行き、父と母の寝室に行き「一緒に寝て欲しい」と頼んだ

母はいいよと言ってすぐに布団に入れてくれた

わたしは本当に安心した

 

翌日もその翌日も恐怖は襲ってきた

何回母の所へ行っただろうか、

2回だったか、5回だったか?

そのうち下へ降りて行くことを許されなくなった(経緯は忘れた)

泣くわたしに対して母は明らかに不機嫌で怒っていた

わたしは一人で恐怖感と闘った

しかしそれはますます強くなり、わたしは

声を上げて泣いた

父が様子を見に来て声をかけてくれたりしたが

「下においで」とは言われなかった

そのうち父は二階に何かを取りに来て、

わたしがまた泣いてるのを見ても何も言わずに

下は降りてしまった

おそらく母にそうしろと言われたのだと思う

 

わたしは絶望した

こんなに怖いのに

両親は下にいるのに

たった一人でこの怖さを耐えなくてはならないのか?

子どもだからそのうち寝てしまう

朝になったらもう全く怖くない

それでもまた夜が来る

 

ある日母は提案した

「お姉ちゃんの部屋で一緒に寝かせてもらったら?」

姉は母に言われたので仕方ないと言う感じ

そこで姉のベッドの横に布団を敷いて寝た

 

ところが

姉が寝てしまうとまた恐怖感が襲ってきた

どうにもならなかった

あまりに泣くので姉が眠れなくて母に

どうにかしてくれと頼んでいた

そしてまたわたしは自分の部屋に戻った

 

わたしは昔から姉と同室がよくて、

引っ越した時に念願の姉との二人部屋になったことがあったが、わたしが片付けが下手なので

姉から「別にして欲しい」と言われてしまった

 

その後も確か二段ベッドで寝ていた記憶もあるがそれがどれくらいの長さだったかは覚えていない

つまり両親もそれなりに考えてはいてくれたのだろう

しかしわたしにとって、あの時の恐怖感は

忘れられないのだ

あの時何度でも母の布団に入れて欲しかった

ベッドで泣いてるなら側に来て

「どうしたの?」と聞いて抱きしめて欲しかった

眠るまで手を握ってて欲しかった

「なんで泣くの?」と問われても

わたしにもわからないのだ

わたしは「なぜ泣くのか」と聞かれても

本当の理由が言えなかった

受け止めてもらえる自信がなかった

 

どれくらい期間が過ぎたのかわからないが

いつしかわたしは泣かなくなった

けれども寝付きは悪かったし

恐怖感はなくならなかったし

夜の暗闇は怖かった

それは大人になっても続いた

 

真っ暗にして眠れない

一人で眠るのが怖い

じーっと布団の中で丸くなってる時

遠くでトラックの走り去る音が聞こえると

「あ、今起きてる人もいるんだ」とほっとした

この世に一人ぼっちなんじゃないんだと安心した

 

わたしは今でも少し外の物音がしているくらいの方がよく眠れる

電気も豆球をつけて寝ている

抗不安剤と睡眠のお薬は手放せない

 

あの時安心して過ごすことができていたら

一人ぼっちじゃないと思えていたら

こんなにも恐怖を引きずらなかっただろう

 

わたしは息子とはずっと添い寝をしていた

毎晩絵本を読み、話をして抱きしめて

手を繋いで、彼が眠るまで側にいて背中を

とんとんした

それは息子にしていると同時に

過去のわたしにしているのだった