凜と生きる

私が経験した「鬱」というものについて

離れた心

素因と不妊治療と母への葛藤

それに加えて夫の気持ちがわたしから離れてしまう寂しさがわたしを病気にしていった

 

不妊治療が辛くなった頃、あれは12月だったと思う

新聞か何かの支払いがあって、わたしは細かいお金が

なかったので、たまたま休みで家にいた夫に

「お金貸して」と言って財布を開けた

そしたら札入れのところにメモがあった

何気なく見たら見慣れない文字で

「クリスマスに欲しいもの」と書いてあって

そこにいくつか欲しいものが書かれていた

明らかに女性の文字だった

わたしはしばらく黙っていたが、どうしても

我慢できなくて夫に尋ねた

「あの財布のメモは何?」と

夫は会社の女の子がふざけて書いて渡してきたのだと言った

冗談ならなぜちゃんと札入れにしまっているのか?

それ以上わたしは聞けなかった

少し経ってから夫は

「実は会社の女の子に気に入られてちょっと

言い寄られている

でもおまえが心配するようなことは何もない」

と言っていた

「わたしがメモを見つけたから言ってるんだよね?もし見つけなかったらその女の子のこと

黙ってたよね」

「いや、いずれ言わなあかんと思ってたよ」

…なんか腑に落ちないけど、これ以上何も言えない

 

夫を信じていればいいのだと言い聞かせていたのに、状況は良くならなかった

夫は携帯を常に手放さなくなった

夜でも電話がかかってきて、夫は部屋から出て

話していた

元々仕事が終わるのは遅かったし、泊まることもあり、その時に一切連絡をくれない人だった

でも明らかに帰る時間が遅くなり、無断外泊も増えた

休みの日に出かける回数も増えたし、何よりも気もそぞろというのがはっきりわかった

今、わたしに全然気持ちが向いてないな、というのは

こんなにもわかるものなんだと知った

 

クリスマス、夕飯が終わった頃に電話があって夫は出かけて行った

年末恒例の旅行では、やはり携帯で電話をしているし、肌身離さず持っている

一泊した朝、やっぱり電話していて突然

「仕事になったから、おまえ達を家に連れて帰ってから、出かけるわ」と言った

前の日夕方に旅館に着いて、翌朝10時に宿を出て昼の13時にはわたしと子どもは家にいた

なんのために旅行に行ったのかわからない

 

それでもわたしは何も言えない

不機嫌にはなるけど、問い詰められない

そして年明け早々の2日にも夫は出かけて行った

また仕事が始まってからも同じような日が続きわたしはとうとう「昨日より今日が幸せ!」と

思えなくなった

不安で不安で、でもきっと勘は当たっている

どんな関係であったかはわからないが、

夫の気持ちがわたしから離れていることだけは

はっきりわかった

そして身なりに気を付けたり、突然わたしに

優しくしたり、普段言わない優しい言葉をかけたりと

ますます疑惑が確信になっていった

 

 

ここでわたしがちゃんと気持ちを言えればよかったのだ

はっきりとさせた方がよかった

同じ事実があるのなら、なにもはっきりわからずに

気持ちを胸の中に抑え込むよりは、ケンカしたり傷ついても、ちゃんと言いたいことを言って知りたいことを知った方がいい

たとえ夫がなにも認めなくても、嘘をついたとしても、ちゃんとやり取りした方がいい

 

春頃だったろうか、ふと夫がこっちをまた見ていると感じた

「あ、終わったんだな」

どんな終わり方をしたのか知らないけど

わたしはよくわかった

この人はこの家庭を選んで帰ってきたのだと

 

しかしすでに遅かった

嬉しさや安堵よりわたしはもう病んでいた