凜と生きる

私が経験した「鬱」というものについて

刺す言葉

友達なら縁を切って他人に戻ればいいけど

家族となるとそう簡単にはいかない

夫はわたしの体調が悪い時ほど

きつい言葉をわたしに吐いた

寝込んで暗い顔をしていると

「一生鬱なの?」

薬を飲んでいると

「ヤク中」

なかなか鬱が治らないと

「病院行って治してから帰ってきて」

この人には心がないのかと思った

なぜ苦しむわたしをいじめるのか

なぜ「大丈夫か?」の一言が言えないのか

なぜわたしを責めるのだ

と、わたしは傷ついたし、夫への愛情や信頼が

どんどん無くなっていくようだった

何より夫の方がわたしに対して愛情がなくなっているんだな、と思い込んだ

 

夫が朝会社に行く準備をしている時から

わたしはもう暗い顔をしている

「行かないで」「せめて何か言って」

という目でじっとり見ている

夫はわたしの方を見ないで

「じゃあ行ってくる」と靴を履く

わたしが涙ぐんでるのに気づいても

何も言わないで扉を閉めて行ってしまう

ああ夜までまたひとりぼっちだ

わたしは絶望してその場に泣き崩れる

もちろん夫は引き返してこない

そんな毎日だった

 

きつい言葉を吐かれて傷つくくせに

側にいてほしい、そんな矛盾を

夫に対して持っていた

優しくされたくて、

話を聞いて欲しくて

泣いてる時は頭を撫で

落ち込んでる時はそっと抱きしめて欲しかった

 

それは叶わなかった

いや、本当は違うのだけど当時のわたしは

夫の本心なんてわからなかった

すれ違う気持ち

 

夫にしてみたら毎日毎日どんよりと暗い顔の妻が家にいるのは鬱陶しかったろう

励ましても何を言っても良くならない妻

疲れて帰った夜も

やっと休める日も

わたしはしんどそうにしている

夫も心からくつろげなかったと思う

でもお互い本心を話すことがなかった

本心がわからないから、吐き出された言葉に

傷つく

 

鬱病の妻を持った夫の気持ち

鬱病に苦しむ妻の気持ち

ほんとは、ほんの少しお互いを思いやれば

わかり合うことができたのかもしれないが

わたしたちは未熟で自分のことで精一杯だった

夫は仕事、わたしは病気

それだけを見つめる毎日だった

 

わたしは夫は冷たい人だと決めつけた

わたしのことなんて思ってないと感じてた

だから毎日寂しくて孤独だった

孤独感で狂いそうだった

でも辛すぎて「助けて」と言えなかった

もし助けを求めてその手をふりほどかれたら

もう生きていられないと思ったから

怖くて言えなかった

 

そして鬱である自分を呪った

なんでこんなに弱いんだ

情けない、恥ずかしい、腹立たしい

自分が嫌いでたまらなかった

そんな日々を何年も過ごした

よく生きていたと今になって思う

当時のわたしは何を支えに生きていたか、

それは子どもの存在だったな

子どもを置いていけない

責任を放棄してはいけない

それだけがわたしを生かしていた