凜と生きる

私が経験した「鬱」というものについて

あなたは誰?

やっと夫は個室に移った

ナースステーションのすぐ横の部屋だった

面会時間も長くなるし、ICUを出たのだから

落ち着いたのだと思っていた

 

個室に移ってすぐだった

夜の11時頃家に電話があった

病院からだった

「ご主人がよくわからないことを言ってナースステーションに来られています

わたしたちの言うことは聞いてくださらないので、

奥さんからご主人に話してください」と 

とても困っている様子だった

電話を変わると夫はわたしに

「この病院はあぶない、怪しいから出て行かないといけない」というような、ほんとにわけがわからないことを話し続けている

まだ錯乱は続いていたのだ

電話ではどうにもならないのでわたしは病院に向かうことにした

息子はまだ熟睡していなかったし週末で学校もないので仕方なく起こして連れて行った

タクシーを呼んで乗り込む

 

運転手さんは「今から病院?子どもさん?」と聞かれたので「夫が入院している病院からすぐ来てくださいと言われたので」と答えると

どうやらとても悪い想像をされたようで運転手さんは黙り込んでしまった…

 

病院に着くと夫は尿を貯める袋を手に持ち、

ナースステーションの辺りをうろうろしている

酔っ払いのような感じでふらふらしていた

「どうしたの?」と声をかけると、

「あの扉の向こうに怪しい人たちがいるから、

今から宝塚のホテルに移った方がいい」と必死で訴える

…これ、どう説得したんだっけ?

覚えてないけどとりあえず病室に戻ってベッド

に寝かせることに成功した

けど一向に眠らなくて大きな声で話し続ける

もう一人同室の方が奥におられて、さぞうるさかったと思う

わたしと息子は病室に泊まることになり、

同室の方に迷惑なのでナースステーションに近い個室にそのまま移動した

 

息子を椅子に寝かしたので、わたしはちゃんと座るところもないまま夜を明かした

夫はしゃべって返事がないと大きな声でわたしを呼ぶので、いちいち反応しないといけない

しゃべるだけしゃべって夫はやっと眠った

わたしは一睡もできなかった

 

そのあとも着替えを手伝おうとしたら怒って

殴りかかろうとしたり、とにかく錯乱は「怒り」で、

なぜこんなにわたしに怒るんだろうと病気とわかってても不思議だったし怖かった

これは脳の病気のせいだと言い聞かせていたけど、自分の精神状態がそもそも悪く何事もマイナスに取ってしまうからダメージも大きくてわたしはますますしんどくなっていった

 

病院の先生はこの錯乱が普通より長いと言った

とてもストレスがたまっていて、それが錯乱で出て来ているのかもしれない、と

じゃあわたしにばかり怒りをぶつけてくるということは、わたしへのストレスがあったってことなんだなと解釈した

義母や兄弟が来ている時は錯乱がなかったから

わたしが状況を説明してもその状態が現れないのでみんな「元気になってるやん、奥さんやから甘えがでてるんやろ」と言った

ああわかってもらえないと落ち込んでいると

義兄が「寝不足やろ?今夜は僕が夜泊まるから帰って寝たらいい」とやっと交代してもらえた

 

夫はこの時期のことを覚えていない

わたしが話すと信じられないという感じで

殴られかけたことや「ゴキブリめ」と言われたエピソードにはとてもウケて笑ってた

悔しい